紅玲愛の頭脳

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書評:『服従の心理』スタンレー・ミルグラム

スタンレー・ミルグラム服従の心理』山形浩生訳(河出文庫)

評者 天上院 紅玲愛

 

 あなたはアドルフ・アイヒマンという人物を知っているだろうか。第二次世界大戦時のユダヤ人大虐殺の命令者がヒトラーとするならば、実行者がアイヒマンだ。彼はどんな性格をしていたと予想するだろうか。サディスト、人種差別的思想、非道徳・・・このような予想が一般的だと思うが、真実はそうではなかった。裁判に際して彼を徹底的に調べ上げた結果分かったのは、彼が「普通の人」であるということだった、彼はあなたと同じ「普通の人」だったのだ。彼は裁判で「命令に従っただけ」と主張していたが、これは紛れもない真実だったのである。このことは私達に恐ろしい考察を与える。あなたがアイヒマンの立場だったらどうしただろうか。あなたは言葉では絶対にあんなことはしない、できないと言うだろう。しかし、先の事実は裁判で「命令に従っただけ」と主張しているあなたの姿を想起させる。本書はこの恐ろしい考察を心理学実験により実証したミルグラムが1963年に書いた研究レポートである。本書はいかなるときに人は服従の心理に駆られるかについて詳しく教えてくれる。

 本書の構成としては18の心理学実験に関する実験目的・実験内容・実験結果・考察を順に説明し、最後に服従の心理の仕組みについて考察をするという流れである。

 ここで、世間で「ミルグラム実験」と呼ばれている心理学実験について簡単に紹介する。実験内容はシンプルだ。実験者2人、被験者1人の3人で実験は行われる。まず実験者の一人が「学習者」として偽の電気椅子に座って問題を解く。電流を流すボタンが押された時には実際に電流が流れていてもがき苦しみ、実験の中止を懇願する演技をする。被験者は「先生」として「学習者」が問題を間違える度に電流を流すことで罰を与える。この電流による罰には30段階あり、「学習者」が1問間違える度に電流の強さを一段階上げる。最終段階の電流の大きさは人がほぼ確実に死ぬ程度の極めて危険なものである。もう一人の実験者は「実験監督者」として実験内容を説明し、「先生」が電流を流すことを嫌がった際に4段階の説得台詞によって実験の継続を促す。実験は4段階目の説得を拒否するか最大電力の罰を与えるまで続き、被験者がどの段階までの罰を与えるかを調べる。実験のテーマは権威者である「実験監督者」のいうことに従う形で罰を与える時に人間はどこまで残酷になるかということだ。この実験の結果は衝撃的なものだ。なんと65%、つまり3人に2人が最大の電流になるまで罰を与え続けたのだ。本書ではこの実験をするに至った経緯や詳細な実験内容、それに対する深い考察などこの実験を語る上で必須であるが一般には知られていない多くのことが書かれている。

 今紹介した実験は非常に有名なので読者の中にも知っている方は多かったかもしれない。しかし、この実験に関連するサブ実験があと17もあるということは知らなかったのではないか。例えば、学生と先生の物理的距離を縮める、学生と実験監督者の立場を入れ替える、先生役を複数人にするなどの実験がある。これらの実験は服従の心理に駆られやすい状況、抵抗しやすい状況に関する深い考察を生み出す。

 服従の心理に抵抗する方法を学ぶにはどうしたら良いだろうか。まずは、服従の心理の仕組みを知ること、服従の心理が働きやすい状況を理解することだろう。あなたが人に服従されないために、あなたがアイヒマンにならないために、あなたの手によって甚大な被害を生み出さないために、今すぐ本書を読んで対策を練るべきである。

 

服従の心理 (河出文庫)

服従の心理 (河出文庫)

 

 

 

 大学のTA先の文系講義で指定の推薦本を読んで1200字〜1600字の書評を書けという課題が出たので超優秀なTAである私もやってみました!!1時間程度で書けたのでこんなんで単位がもらえる学生が羨ましい、私にも寄越せって感じ・・・

服従の心理』はマジで面白かったのでオススメ!!ぜひ読んでみてください!!

 

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